CareTEX覗いてきました。
どもー。
最近あまり代わり映えしなくなってきたせいか、国際福祉機器展にも飛び飛びでしか参加しなくなってきた今日このごろ、今回は久しぶりにちょっと心惹かれるイベントがあったので参加してみました。
今回参加してきたのは、介護業界&専門職向けの介護用品・設備・運営システムの展示商談イベント「CareTEX(ケアテックス)2016」。今年で2回めの開催ですが、国際福祉機器展に比べると、より介護の専門家や介護事業所の経営者向けといった趣で、大手企業よりややニッチな企業がたくさん軒を連ねておりました。
というわけで、福祉の専門家的視点、そして単純にガジェット好きの視点で気がついたことをざっくりまとめてみます。
その1。
『介護ソリューション系のブースが、あまり参加者にやさしくない。』
「介護ソリューション」というのは噛み砕いていうと、ITなどのテクノロジーのチカラで介護業務を効率化・適正化するような技術・サービスのことをさします。たとえば、介護支援記録システムや高齢者見守りシステム、業務管理システムなどがそれにあたります。最近は本当にこれらを手掛ける企業が増え、ある程度技術が成熟してきたせいか、コモディティ化、つまり一般化が進み技術的な差があまり見られなくなってきていて、ほとんどどんぐりの背比べ状態です。それなのに、各企業は「ウチがウチが」で各ブースで懸命に気炎を吐いている割に、まったくその良さが伝わってきません。
これはひとつに、自社製品の優れている(と本人たちが豪語する)ところばかり取り上げていて他社製品との差が分かりにくいことが挙げられます。これだけたくさんの製品・サービスが登場しているのは当然介護保険制度をはじめとした高齢者支援にまつわる産業の成長性の高さを反映していることは明らかなのですが、早いもん勝ちで顧客を獲得できれば導入させた側の企業にはうまみがあるけれど、導入させられる介護事業者側からすればそのメリットをよく理解できないまま、ただ何となく導入したまま漫然とシステムを使わされて、けっきょく効果的なソリューション(問題解決)にもつながらないという弊害も出てくることは免れません。この点においては、参入している企業らが業界団体を設立するなどして、介護に関わるソリューション技術のメリットや独自性を介護業界や一般市民向けに分かりやすく解説し、比較検討しやすいしくみをつくることで提案側にも導入側にもメリットが産まれるのではないかと考えます。
もうひとつは、具体的な利用価値・導入価格・継続費用がそれぞれ分かりにくいということがあると思います。たとえば介護事業所でひとつのシステムを導入するためには、企業側に細かい要件提示をしてからでないと具体的な価格を提示してもらえないことが多いです。ビジネス的にはもちろんそれが正しいのでしょうが、いかんせん、比較するためには全ての検討企業をひとつひとつまわって、いちいち要件提示していかなければなりませんから、面倒だからもう最初に声かけたところでいいや…と妥協してしまうこともかなり多いのではないかと推測できます(自分だったら面倒でそうしてしまう)。そこで例えば、事業種別(特養とかデイとかヘルパーとか)ごとに利用者数や職員数などおおまかな事業規模のモデルケースをいくつか立てた上で、それぞれの場合におおよそどれくらいコストがかかるかをざっくり提示してもらえると事業者側は比較しやすく導入のハードルが下がるのではないでしょうか。これは介護保険サービス利用にも言えるのですが、例えば特養に入所することになったときに、いったいどれくらいの費用がかかるのかが分かりにくいのと同じです。もちろん利用者の要介護度や、運営法人の加算状況などによっても利用負担はだいぶ違ってくるため、実際に利用してみないと細かい料金は提示できませんが、それでもある程度のモデルケースとそれに応じた料金がざっくりわかっていれば、実感として想像しやすいはず。この点はここ数年の国際福祉機器展でもずっと同様に感じていたので、ぜひモデルケースとおおよその価格提示はぜひやっていただきたいところです。
その2。
『職能団体の動きがあまりなく、寂しい。』
今回、日本ホームヘルパー協会や日本介護支援専門員協会、テクノエイド協会など数々の職能団体・関連団体らが後援団体として名を連ねています。そして今あちこちでザワザワさせている日本介護福祉士会もいちおう後援団体に含まれていました。が、ヘルパー協会やケアマネ協会はブースを出していましたが、介護福祉士会はお金だけ出してブースすら出していませんでした。あれだけテレビ局に噛み付いているヒマがあったら、こういうところでしっかり啓発して、介護業界を介護専門職の視点から盛り上げていけばいいのに、そういう発想がまったくないんでしょうね。まあ介護の展示会なのでソーシャルワーク系の職能団体が参戦していないことはしかたないのかなと思いますが、介護福祉士会はポスター展示だけでもいいからブース出せばよかったのになぁと組織としての残念度を再認識してしまいました。ちなみにCareTEXの出展料は1ブースでウン十万円するとのことなので、金額的に厳しいのであれば、他の職能団体と協同でブースを出したりすることもできたんじゃないかと思うんですが、そういうのはプライド的に許さなかったりするのでしょうか。(単純に1ブース1団体というルールがあるのなら仕方ないですが) まああんまりディスってばかりだとこちらも気が滅入ってくるのでほどほどにしておこうと思いますが、職能団体を標榜しているのならもうちょっとあれこれがんばっていただきたい…などといまの介護福祉士会にそこまで期待するのはちょっと酷なのかもしれません。あ、ソーシャルワーク系の職能団体も、もっとがんばってもいいんですよ!商売に直接つながらない非営利の職能団体や中間支援団体などは、もう少し安くブース出させてもらえたらいいんですけどねぇ。チーム・フクシゴやSCAでもブース出せたらけっこう面白いかも…。
その3。
『最先端テクノロジーはもちろん、既存の技術の面白い使い方の模索が面白い。』
今回のCareTEXでかなり目立っていたのは、ソフトバンクが販売しているロボット「Pepper」の存在。けっこう多くの企業ブースで取り入れられていて、あちこちでそれぞれに個性のある活躍をしているようでした。そういう最先端のテクノロジーの活用は、特に前時代的と言われる介護業界にはもちろん必要なのですが、それはそれとして、特に目新しいわけではないけれど、ちょっと視点を変えて取り入れてみたような既存の技術やサービスを開発研究に活かす「Re:介護」とも言えるものがけっこう面白いなぁと感じました。たとえば、車いすに座ったまま着ることができるように上下セパレートに仕立てた和着物や、アナログなゲームを使ったリハビリ用品とか。特に今回私が一番気に入ったのは、サウンドファンさんの「ミライスピーカー」です!4月の障害者差別解消法施行を見据えて、難聴者にも聞こえやすいスピーカーを開発したとのことで、ブースの社員さんに聞いたらまだ製品が完成したばかりで今回のCareTEXが初お披露目だったそう。聞き取りやすいスピーカーときいて、何か電気的に周波数などをいじって聞き取りやすくしてたりするのかなーと思っていたら、何とスピーカー内の振動板(音を外に伝えるための部品)をぐにゃっと曲げて設置することで、広いところでもより遠くまではっきり聞き取れるように工夫したのだとか!「つくり」の工夫だけで多くのひとの聴こえを保障した、画期的なアイディアにかなりぐっときてしまいました。しかもこれ、「難聴者向け」ではなく、健聴者にも聞き取りやすいというまさにユニバーサルデザイン。こういう出会いがひとつあるだけで、わざわざ夜勤明けにこのイベントに来たかいがあったなぁとウキウキしながら会場をあとにしたのは言うまでもありません。あ、たぶんあまり伝わらないですよね、この感覚(笑)。いいんです、このへんはほぼ自己満足の域ですのでっ。
とまあそんな感じで語ってまいりましたが、たまにはこういうイベントに顔を出すのも楽しいものです。最近は国際福祉機器展以外にもこういった介護・ヘルスケア系のイベントが少しずつ増えてきたので、興味があればぜひ覗いてみてはいかがでしょうか。ちなみにCareTEX2016は3/16(水)~18(金)まで東京ビックサイトにて開催しています。事前登録すれば無料で参加できますので、平日昼間にお時間ある方は、ぜひ足をお運びいただければと存じます。各業界の専門家たちが登壇者となりいろいろな視点で介護を語る専門セミナーもけっこう魅力的ですよ!
詳しくはCareTEXの公式サイトにてチェックしてみてくださいませ~。
http://caretex.jp/